本委員会設置の目的は,コミックを中心としたモダンカルチャーコンテンツを工学的に利用するための学術的知見の蓄積と,コンテンツを介して分野を跨る異分野コミュニティ間の意見交流と連携の促進である.
アニメや漫画などのモダンカルチャーについては,クールジャパン関係府省連絡・連携会議等でも議論されているように,アニメや漫画を文化的価値の高い資源として活用・蓄積する必然性が謳われている.コミックコンテンツは,絵と文字が相補的かつ協調的に利用されているクロスモーダルなコンテンツである.そのため,これらを計算機で利用可能にするには,予めコミックの内容を解釈してコミックを構成する要素(例:キャラクターや吹き出し,コマ領域など)を抽出し,それらをコード化・構造化して蓄積しておく必要がある.加えて,文字情報のみではなく,絵として描かれているキャラクターやオブジェクトの情報も蓄積する対象に含めなくてはならない.また,そのようにして抽出された情報を活用して新しいサービスを考案するためには,システムやアルゴリズムだけでなく,人がどのようなニーズを持っているかといった認知的側面を考慮する必要がある.
このように,コミックを工学的に利用するための研究は,画像処理,データベース,人工知能,インタフェース,認知科学といった様々な領域にまたがる境界領域の研究である.コミックというコンテンツを中心に据え,その活用イメージを共有し連携することができれば,研究の加速や新たな研究側面の発見につながると期待される.本研究会は,こうした境界を跨いだ研究連携を促し,情報交換のみならずデータやコーパスの共有,技術連携を通じてコミックコンテンツの新たな活用法の確立に貢献することを企図する.多様な研究分野からの研究者が一同に会してコンテンツ志向で意見交換を実施する場を創出することで,異分野間での学際的な知識共有や技術発展が見込まれる.これは,マルチメディア処理やヒューマンコンピュータインタラクションなどのそれぞれの研究分野の発展にも寄与することが期待される.
国内でのオーガナイズドセッション,国際ワークショップなどでは国内外のコミックの工学的利用に関わる研究者との研究交流を推進し,漫画家や声優,電子出版企業といったコミックやアニメの実務家とも交流を行い,アカデミックと実サービスとの連携を目指して活動する.